毎年11月から12月にかけて、企業や事業所で行われる「年末調整」。
給与所得者にとっては、一年間に納めるべき所得税の金額を確定させる大切な手続きです。今回は、その仕組みと、従業員・企業それぞれが準備しておくべき書類、そして注意しておきたいポイントを解説します。
■ 年末調整とは?
年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収されていた所得税の合計額と、実際にその年に支払うべき正しい所得税額を比較・精算する手続きです。
毎月の給与から引かれる税金はあくまで「概算」のため、年末に各種控除(生命保険料控除・扶養控除など)を反映させて過不足を調整します。
この手続きによって、ほとんどのサラリーマンやパート・アルバイトは所得税の確定申告を行う必要がなくなります。
ただし、後述のように一部の控除は年末調整では扱えないため、注意が必要です。
■ 従業員が提出する主な書類
年末調整では、以下の書類の提出が必要になります。提出漏れがあると控除が受けられないため、早めの案内と確認が大切です。
| 書類名 | 内容・用途 |
|---|---|
| ① 扶養控除等申告書 | 家族構成や扶養親族を申告。毎年必須。 |
| ② 保険料控除申告書兼配偶者控除申告書 | 生命保険・地震保険料控除や配偶者控除を記入。 |
| ③ 住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除を受ける人が提出(2年目以降)。 |
| ④ 各種控除証明書 | 生命保険・地震保険などの支払証明書(保険会社から10〜11月頃に届く)。 |
| ⑤ 国民年金・国民健康保険料の領収書等 | 自分で納付している場合のみ提出。 |
■ 注意点:年末調整ではできない控除もある
年末調整では対応できず、確定申告が必要となる控除もあります。代表的なものは次のとおりです。
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ふるさと納税(ワンストップ特例を申請していない場合)
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医療費控除(年間10万円以上の医療費がある場合)
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寄附金控除(ふるさと納税以外の寄附)
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雑損控除(災害・盗難・事故による損失)
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住宅ローン控除の初年度
年末調整はあくまで「給与所得のみ」の税金計算です。これらの控除を受けるには、翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に、個人で申告を行う必要があります。
■ まとめ
年末調整は、従業員にとっても企業にとっても年に一度の重要な税務手続きです。
提出書類の回収や控除内容の確認を早めに行うことで、年末の事務負担を大幅に軽減できます。
また、ふるさと納税や医療費控除など、年末調整では完結しない控除についても周知しておくと、従業員が確定申告をスムーズに行えるようになります。


